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テロリストブッシュと人間




『テロリストブッシュと人間』
太陽肛門スパパーン+ヒメジョオン

インディペンデントレーベル - ASIN: B000089DN9
¥2415(税込) 2003/3






 タイトルやグループ名から想像できるでしょうが、インディーバンドによるブッシュ批判全開のアルバム。もうとにかく全編ブッシュやアメリカに対して「おまえの母ちゃんデベソ」レベルの悪口が展開され、くだらない下ネタが飛び交う。ぼくはこういう「大人が考えたガキくささ」がニガテなので、期待して聴いた本作にガッカリした。なんちゅーかもうちょいインテリジェンスが欲しい。意識して排除したんだろうけど、これだとみもふたもないっていうか。

 音楽的なバラエティには目を見張るものがある。ラップからクラシックからジャズからなんでもありだもんね。コルトレーンの「ジャイアントステップ」に歌詞を乗っけたりといった反則ワザ(!)も出てくるし、自分たちでアレンジも演奏もこなしたクラシック風の曲なんかには光るものを感じる。でも、メロディへの言葉の乗せ方はもうちょい工夫ができるだろうし、歌のヘタさとか、テクニック的なものの未熟さ、整理編集能力の欠如も気になってしまう。録音や制作環境からして「インディーズ集」が漂うのも聴きにくさの原因としてあるだろう。「東京都町田市立つくしの中学二年B組午前二時」での「B組女子は ほぼ全員 ほぼ全員 オナニーしてる〜♪」ってフレーズは好きだし(ほぼ全員の「ほぼ」っていいな)、言葉のメロへのすりより方がいいなあと思う(二回繰り返す仕方がいい))。そういう箇所はあるものの、これを聴いて「笑う」、音楽的に「感心」するところまで行かなかった。

 なんというか人を笑わせる、くだらねーって思わせるためには、安心して聴ける音じゃないといけないと思う)。で、安心して聴けるためには相当のテクニックが要求されると思うのだ。このボーカリストの肉体性のなさとか、聴いてて不安になっちゃって。歌詞も聞き取りづらいし。そういうお皿の部分が完成して、はじめて料理の方を味わうことができるんじゃないか。しかも、曲のテクスチャーが乱雑なせいで、音楽的なおもしろさがなくて、どうも歌詞や「反骨精神」に引っ張られてる印象を受けてしまう。飽きてしまうし、一緒に口ずさめるポップさもないので、そこらへんもツライ。歌謡曲、ポップス性の高い曲が、いまいち印象が薄いことからもそこらへんの限界が気になってしまう。バンド演奏もおもしろくない。

 テクやお金がないのは仕方ないかもしれないけれど、だったらもう少しはじけてくれてもいいじゃん!うまく歌おうとするの止めて、ダメさやモノマネっぽさを打ち出した方がステキな音楽、ひっかかりのあるものになるんじゃないかな。

(2003/11/17)




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