『外道ベスト』
外道
ソニーミュージックエンタテインメント - ASIN: B00009KMBU
\3059
(2003/07/24)




 今夏はフジロックにも出演、過去のレア音源の蔵出しから、新作の発表まで、なにかと元気なニュースが聞かれる外道周辺だけど、これは最近出た彼らのベスト盤。選曲も申し分なし。今まで知らなかったけど、フジロックでちょっと気になったとか、そういう若いファンにもおすすめの一品です。

 着物やメイクといった(それにドラムのまわりの鳥居とか)ファッショナブルな側面、歌舞伎者的側面で捉えられがちだけど、このベスト盤を聴けば彼らのミュージシャンシップの高さがわかるはず。「ゲー・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・外道!」って超有名なフレーズを繰り返すパンクの名曲「香り」や、「おまわりさん楽しいですかあ?」のMCも完全収録、もろギターウルフな「ビュンビュン」(74年だぜ!)、コンパクトでかっちり構築されたスタジオ作の「にっぽん賛歌」など、どれも理屈不要のかっこよさ!

 彼らのいいところは音楽的に、独自の美学をしっかり持っていて、それがきっちり表現できているところですかね。だから、構造的には単純でつまらないものでも、それがちゃんとこちらに突き刺さってくる。とにかくシンプル。で、とにかくかっこいい。外道の音楽を語るのに言葉はいらないだろう(おやおや、ぼくらしくないセリフだな)。

 とまあ、ベスト盤の方はそんな感じなんだけど、注目すべきは、そして全ロックファン必見なのが、初回版のみについてくる田原総一郎プロデュースTV番組『新若者孝〜シラケの季節をぶっとばせ』を収録したDVD。これがねえ、とんでもない代物で・・・よく残していてくれた!って快哉を叫んでしまいましたよ。

 知らない人のためにいくつか解説しておくと、外道が活躍した時期(72〜74年)に、外道集団という取り巻きがいて、これらは「大工・左官・ペンキ屋などから構成されて」おり、まあ早い話がまだその名もないころの暴走族たちなんですわ(というより、カミナリ族でさえないからなあ。当時はサーキット族って呼ばれてたらしいけど)。で、こいつらの生態と外道のライブを追ったドキュメントが、この田原総一郎の番組なのだ。

 若き頃の田原総一郎(ルックスやばい!)が、偏差値の低そうな若者に「外道のどこがいいの?」「何が不満なのかな?」ってインタビュー。なんとか使えそうなフレーズを引き出そうとするんだけど、語る言葉を持たない外道ファンは「うーん、なんつーかさ、その、あのさ、おれらってさ、だけど、ああ、もううまく言えないけどさ・・・」とその期待を確実に裏切っていく。これが非常に痛快で笑える。

 そんで動く外道の姿を収録してあって、これがまたかっこいい! 音は明らかに重ねなんで、音楽的にどうこうって話は意義があまりないんだけど、その見てくれの存在感は圧倒的です。

 というわけで、このDVDこそ今回の目玉ですよ。およそ30分ほどの映像だし、頭出しさえできぬ安物映像なんだけど・・・一見の価値、間違いなくあります。初回盤かそうじゃないのか、どちらを買うか迷ったら絶対初回盤を買ってください!

 ・・・驚くなかれ、この外道集団、なんと21世紀の今でもちゃんと存在していて、外道のライブでは異様な盛り上がりを見せるとか。しかも、これまた驚いたことに当時からの取り巻きもその中にいるみたいなんですよ。そういう取り巻き連中まで含めて、外道だっていう、その独自の存在感、それは最近のロックじゃなかなかないです。 今後はギターウルフや原爆オナニーズなどが参加したトリビュート盤も発売される予定だとか。最近の(いろんな意味で)優等生なロックに少し飽きてきた人は是非とも彼らの作品に触れてみてください。

(2003/08/25)
 

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