『論理サバイバル』
三浦俊彦(著)
二見書房 ISBN: 4576030779
\1575
(2003/05)



 様々な論理パズル、パラドクスを紹介&解説した『論理パラドクス』の姉妹編。わりかしオーソドックスな問題を扱っていた前作に対し、哲学で有名な問題(フレーゲのパラドクス、クリプキの信念パラドクス、ナーゲルのハーダープロブレムなど)を多く扱っていることが特徴かも。

 論理学の知識が特になくても理解できる内容であり、記号はできるだけ使わないようにしているので、論理学の学習はしたことがないけど、「論証力」「議論力」をアップさせたいと思っている読者にはピッタリの本かもしれない。 一応、入門的な内容となっているが、各問題の最後には英語での原著も含め、多くの参考文献を紹介しているので、その点発展的な学習をしたい人にも適していると思う。

 この手の「論理力向上」を目的とした本には珍しく、「確率」の問題に多くページを割いているのも特筆に価すると思う。ぼくは、そこんとこ特に苦手なので大変参考になった。一問一問答えを解説して終わりなのではなく、そこから様々な教訓を引き出してくるところ、細かい場合分けの仕方をどうしたらよいかまで解説してあるところはさすが本業の哲学者が書いただけあり、他の凡百の「ロジカルシンキング本」とは一線を画している。ってか、その手の「ロジカルシンキング」本て、全然ロジカルじゃないところがウケるんだけどね。というわけで、本書には難しい問題や理解するのが容易ではない解説もあると思うんだけど、苦労したら報われると思います。

 『もっともらしい問いをめぐらして感慨にふけるよりも、正々堂々と解ききることの快楽に目覚めていただこう――それが本書の狙いです』。これは前作『論理パラドクス』のまえがきであるが、その姿勢は本書『論理サバイバル』でも一貫している。ただ、前作と比べて、集められた問題のクオリティが下がってるというか、わりかし退屈な問題、わけわかんない問題が増えたような気もするので、その点残念。哲学関係の問題の解説もイマイチ納得しにくいものになっているし。カリーのパラドクスを使ってラッセルの集合のパラドクスを解説してる箇所など、さえてる箇所は結構あるのだけど、彼の『論理〜』シリーズはここらへんで打ち止めかな、って思いました。まさかまた続編でないでしょうね?

(2003/06/20)


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