『エスキモーDVD』
ザ・レジデンツ
ビデオメーカー - ASIN: B000093484
¥3360
(2003/04/20)


 遂に出た。何が? 『エスキモー』のDVDがである。レジデンツがDVDを出すと聞いて悪い予感が走った。で、その悪い予感(それはファンにとっては「期待」ということだが)、的中である。 

 まず、DVDだということでフツウの映像作品だろうと考え、この作品を鑑賞するのであれば、それはもう絶対期待はずれというか、自分が何を見ているのかもよくわからなくなってしまうことになるだろう。映像とはいってもレジデンツがインターネット(!)などを使って集めたエスキモーの写真や絵が、画面に現れたり、消えたり、並行移動したりするだけで、本編では他に動きらしい動きは見られない。映像は全体に青みがかったモノクロームで統一されており、その点でも単調である。

 だけど、そこがいい。本編の映像や音を差し置いて、こちらの妄想だけが加速する。インサートされた写真がちょっと動いただけで、こちら側(つまり目玉側)の人間なら大興奮である。地味でほとんどないに等しいような画面の動きも、ラストに近づくにつれ激しくなってくる。モノクロームの画面に最後に登場する真っ赤な太陽と、コカコーラのロゴに涙してしまった。

 本編以外では、エスキモーの人たちのフィールドワーク映像である「ナヌーク」の編集版が収録されており、ここではレジデンツの新作音源も聞ける。狩りをしているエスキモーの成人男子が、北極の氷の上で何度も何度もコケる映像は、生きることのおかしさを伝えてくる。音の方はコメントすんのもバカらしい。素晴らしい出来だ。

 他にもエスキモーの風習に関するコメントの紹介も兼ねた『ディスコモー』の映像が収録されており、これもファンにはたまらない内容だ。何の新しさもない意味不明の映像が5分ほど続く。贔屓見目に見て、ファミコンのバグ画面のようなその映像は、サピア=ウォーフ仮説よりもよっぽどラディカル。

 一応このDVD、5.1チャンネルにリミックスされており、そういった環境で見る場合、また違った印象を持つことになるのだろうけど、残念ながらその点は味わうことができなかった。というわけで、今回はここまで。

(2003/05/20)

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 知らない人のためにいくつかの解説を加えておくと、レジデンツというのは72年から活動している謎の覆面グループ(たいていは写真のように目玉の被り物をしている)で、その代表作が、エスキモーの生態、文化をレジデンツの妄想により音像化した『エスキモー』である。彼らはこの他にも、一曲一分40曲入りの『コマーシャル・アルバム』だとか、旧約聖書を題材にした『ワームウッド』だとか、ローリングストーンズの『サティスファクション』のカバーだとかを出している。
 
 レジデンツは『エスキモー』のディスコバージョン、『ディスコモー』なども発表している。『エスキモー』自体、ほとんど吹雪の音ばかり、みたいなアルバムなので、それのディスコバージョンというのも推して知るべしなのだけど、一応解説しておくと、『エスキモー』中のハイライトを4つうちにして繋げただけのような代物で、そのピコピコ感がファンにはたまらないといった内容となっている。これ以上の詳しいことを知りたい方は、リンクにあるレジデンツ公式サイトの方をご覧下さい。



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