『Blue Line』
Yae
ポニーキャニオン - ASIN: B00007JMKH

¥3045
(2003/01/16)


 アマゾンのカスタマーレビューとか、雑誌のレコ評を読んでみたところ、どうやらこの人の作品、世間では一種の癒し道具、ヒーリングアイテムとして消費されている面があるようだ。世に言う「癒しブーム」を、世間からの「ダルい痛いビーム」(by千乃正法)としか感じないぼくのような人間は決して世間には少なくないと思うが、果たして「癒し」という何もいってないに等しいタームでこの人の作品を片付けていいものだろうか、ってな疑問が、この『Blue Line』を聴いて湧いてきた。

 語弊を恐れずにいえば、yaeのうた、最初に聴いたときぼくにはかなり気持ちが悪かった。フレーズの最後は音程がグニャグニャするし、声の立ち消えも微妙。しかし、これに不思議な魅力があるというか、自分にはすごく引っかかってくるものがある。別に歌が下手だって言ってるわけではない(もちろんうまいともいってない)。ただ、うたに対する独自の拘りがあるのは強く感じられる。そしてその拘りに青臭い自意識・自己主張は感じない。例えば元ちとせ。ああいうわかりやすい、わざとらしい歌ではない。感じるのはもっと微妙な違和感であって、音の風景に溶け込んでいるような気もするが、風景を響かせて歌っているって言った方がいいのかもしれない。そんなうただ。

 神様視点や巫女視点にたって歌う女性ボーカリストは、あんまり好きじゃない。「私は神の子」なんて言われてもアホくささ、青臭さしか感じない。大自然のオラクルを気取った歌も演出過剰が鼻について楽しめない。でも、yaeが表現しようとしているのはもっと具体的な「場所」とか「記憶」なのだと思う。勝井祐二(バイオリン)参加の4曲目など、パーソナルなラブソングのような感じなのだけど、民謡的なボキャブラリーを随所で使っていて、個人をこえたところと響きあっている。そうした響き合いが、彼女のうたをより魅力的なものにしている。

 確かに、坂本龍一のピアノインストなんかが好きな人が、彼女の手クセで作ったような感じがするメロディを「癒し」と感じるのもわからんではないが、「癒し」という聴く者に対するオモネリではなく、基本的に本作はあれしたいこれしたいで作ったアーティスティックな作品だ。今後の活動と成長が楽しみ。

(2003/05/21)

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 音楽について何か書くのって難しいなあ。あんまりボキャブラリーがないし、がんばって書いてみてもなんか違う気がする。特に自分がよくわからん音楽については。というわけで、さんざん苦労した挙句、あんまりうまいものが書けなかった。勝井さんの漢字、あれでよかったんだっけ?情報ニュース番組的な話も一応しておくと、このyaeさん、加藤登紀子さんの娘さんです。どうでもいいんですけどね。わりかし、知りやすい話だし。



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