『ジプシーのうたを求めて〜砂漠に生きる漂白の芸人たち(インド・ラージャスターン州)』
ビクターエンタテインメント - ASIN: B000063L5V
¥2730
(2002/04/24)


 インドの門付け(かどつけ)芸人たちの音楽をDATにてフィールドレコーディングした作品。

 娘達が声だけで演奏する曲から始まるんですけど、これだけでもグッときちゃいます。力強いうたに音が割れたりもするんだけど、そんなことが全く気にならないほどの素晴らしさ。むしろ鳥の声やジェット機の飛行音、風がマイクに当たる音が、現在の世界の中で演奏するインドの芸人達の生々しさを伝えており、感慨深いです。他にも口琴や一弦楽器、板切れを重ね合わせただけのカスタネットみたいな楽器(バカテク!)などを使い様々な曲を演奏していくのですが、どれも独特の音色やリズムが心をつかんで離しません。フラメンコやクレズマー、日本のチンドンといった他の放浪ストリート音楽との共通性も興味深く、ハッとさせられます。

 後半からはアラブ色が強くなってくるのですが、さりげなく「国境というものの曖昧さ」を露呈させるうた・演奏がとてもラディカル。エキゾティズム的文化消費スタイルによって初めて「おもしろい」と言えるような作品ではなく、こちらの音楽世界地図をグラグラと揺さぶるパワーに満ち溢れています。(彼女らの音楽を「力強い」「パワーに溢れている」と表現すること自体、文化表象をめぐる力関係に巻き込まれざるをえないのですが・・・)

 解説・ライナーも親切で非常に勉強になり、商品としての完成度の高さに貢献しています。こういった音楽に詳しくない人も解説によって十分に音楽の世界に入っていけるでしょう。全音楽ファンに一聴をすすめる素晴らしい音楽です。



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