『インタラクティブ・ライブ・ショウ2000 「賢者のプロペラ」version1.4』
平沢進
ビデオメーカー ASIN: B00005O5Y9
¥7000
(2001/10/11)


 2000年に行われたという平沢進のインタラクティブライブを収録したDVD。インタラクティブライブって何?って思う人は結構多いと思われるので説明すると、観客の選択や行動に応じて演奏される曲やストーリー進行が変わるライブのことをインタラクティブライブっていうらしいです。要はゲームとライブ演奏の合体って感じかな。以下、具体的に平沢進のライブの進行を順に追っていくと・・・

 まず最初に、ステージ上のスクリーンになんかストーリーらしきものが表示される。やれ「私は錬金術師」だの「ここはバガン」だの「時間流を統一せよ」だのよくわからん説明があり(ほんとよくわからん!)、このライブの目的は「賢者のプロペラをまわすこと」であることが、なんとなくわかる。で、その目的を達成するために、ステージ上の平沢、観客、ネットでこのライブに参加している在宅オーディエンス(このライブ内の設定では「全一者の千の名前」と言うらしい。ほんとよくわからん)の三者が力を合わせていろいろなことをしてタスクをクリアしていく。例えばスクリーンに壁が表示され、「壁を壊す方法を選択せよ」「L:腐敗法 R:焼却法」とかなんとかメッセージが出て、それに合わせて観客が叫ぶと、多く叫ばれた方が選ばれることになり、その選ばれた方法によって在宅オーディエンスが壁を壊す作業に精を出す(ネット繋いでキーボード叩いて)。その合間に平沢の演奏があって・・・という感じ。結果によって、演奏される曲が変わり下手をすると最後まで行くことができずにゲームオーバーになることもあるという(というよりそうなることの方が多いらしい)。

 ハッキリいって平沢の演奏それ自体はかなり単調。アレンジはアルバムとほぼ同じだし、さしてハデな演出があるわけではないし(むしろ地味)。DVDで見たカメラワークもワンパターンだし。この時間自体は「待ち時間」なのだと痛感させられる。まあ、ぼくはファンじゃないからそう思うのかもしんないが。

 じゃあ、それが苦痛かというとそんなワケではない。むしろ不必要なくらい長く間延びした時間がよくわからん感動を生むのである。待たされることの快感。反応の鈍さに苛立つ楽しさ。このライブ映像はそういったものを味わわせてくれる。

 最新テクノロジーを駆使した観客とアーティストのインタラクティブな・・・といってはみても、実際やれてることは、声に反応してストーリーが進むとか、携帯電話の着メロのエネルギーを集めてプロペラを回すとか、要はみんなでガーってやると何かが起こるといった、ものすごく原始的で単純なことだけだったりする。しかし、その原始的で単純なことを、なぜか非常に重要な儀式のように感じさせてしまう個人的演出力とカリスマ性に、平沢の個性・魅力を感じてしまう。最新のテクノロジーは所詮その宗教儀礼的な空間演出のためだけに使われている、といった感じだ。うーん、意外にそれが新しいのかもしんない。

 O川R法氏のようなダサい首飾りといい、全く意味不明ゆえにどんな解釈も許す怪しいストーリーといい、「賢者のプロペラを回す」というなんだかサッパリよくわからん目的のために一致団結し奉仕する観客集団といい、さしずめ新興宗教のような様相を呈するこのライブ。あまりにもバカらしいので爆笑してしまうのだが、ずっと見てるとその取り組みの懸命さに不思議と感動する、泣けてくるという困った代物だ。観客からのコールに反応して鳴る携帯電話。それを、流れ作業をこなすかのごとく淡々と、しかし熱心にマイクにスリスリする平沢にいつのまにか見入ってしまっている。しまった。部外者だと思っていたがいつのまにやら信者だ。

 インタラクティブライブの説明、最近の活動など、わからないことがあったら平沢のオフィシャルページまで飛んで調べて見てください。なおさら意味がわからなくなります。現在イラク攻撃に反対する行動と称して、楽曲無料ダウンロードサービス中。うーん、ほんとに神がかってきた。さすが「地球最後のカリスマ」(笑)←帯フレーズ。インターネットというヴァーチャル空間の上に、さらに別の「平沢空間」をつくる試みから目が離せません。



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