ミュージック・フロム・カオス  デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン(CD・2003)



 以前紹介したスパンクハッピーの菊池成孔がやってる別動ユニットの2枚組ライブアルバム。参加ミュージシャンにはあの大友良英(ギター)、テューバの関島岳郎なんかもいて、そういうファン(ex.白木くん)にはたまらん作品なんですよ。

 音楽性は、スパンクハッピーとは全く違って、ちょっとしたジャズロック(ダンスミュージック風味あり)って感じ・・・って言えばいいのですかね。ちょっと説明しにくいんですけど、曲目からしてマイルス・デイヴィスの『スパニッシュ・キー』をカバーしてたりで、まあ、ああいう電化したジャズっぽいものを想像していただければ、そんなに外れちゃいないです。やっぱりマイルスのような「あの」独特のクールネスも持ち合わせてはいるけど、曲のそこかしこで見せるオシャレなポップセンス(菊地のカンチガイのそれ)が愛嬌あって、ぼくは好きですね。ってことで、具体的な曲目などの解説に。

 一枚目は「CATCH 22」って曲を5バージョン収録、かつ、それで全て。つまり、まるまる一枚全て同じ曲ってわけね。ファンの方はこういうので「おお!」って思うのかもしれないけれど、ぼくはちょっとなあ。正直、曲じたいがあんまり好きじゃないし、それが5回も繰り返されるってだけで、レコードとして通して聴く気がなくなる・・・。もちろん、同じような演奏が5回も続く、ってわけじゃないので、というか全て全く違うので、こういう編集はこれでありなのでしょうけど。聴いたことある人からは、大ブーイングくらいそうだけど、このバンドのおもしろさは、そういうところには感じないですね。

 というわけで、ぼくは2枚目の方が好き。「PLAYMATE AT HANOI」で始まり、「ホー・チ・ミン市のミラーボール」で終わるDISK2。ベトナムにやたらにこだわる菊池成孔だけど、彼のキャラからしてとっても皮肉の効いた選曲だと思われます。スパンクハッピーのアルバムにも収録されてた「ホー・チ・ミン〜」こそ、個人的ベストトラックですね。こっちのバージョンは10分以上あって、途中でマイルスの『オン・ザ・コーナー』ライクなタブラが入ったりもするけれど、全体的に軽めの味付けで、こういう余裕のある演奏加減には惹かれてしまうなあ。その前まではここまでハッキリしたメロのある曲は聴けないので(『S』とかは違うけど)、さんざマイルスみたいにされた後にこの曲になだれ込むとき、なあんか気分が昂揚するんですよ。

 その前までの演奏はそれはそれでおもしろいんですが(例えば『CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE』とか)、なんというか、録音の都合なのか、ミックスなのか、ドラムやベースのリズム隊の音の処理が、ぼくにはフィットしないですね。だから、聴いていてもあんまりひっかかってこないというか、「ああ、もう少し輪郭がハッキリしてたらなあ」とか考えちゃって、集中できない。多分、再生システムに問題があるのかもしれないけれど。もうちょっとポップ性の高い選曲で、このバンドのライブ聴いてみたいですね。

******

 親方は全くぼくとは逆の感想だったらしく、「ホー・チ・ミン〜」とかはよくないけど、他は大好きってものでした。親方の再生システム、ぼくのそれとは全然違うからなあ。趣味も違うし。

 スパンクハッピー、デートコース、あともう一つ、菊池は東京ザヴィヌルバッハってバンドもやってるんだけれど、これに関してはぼくは全くいいとは思いませんでした。音楽の抽象度が高すぎるというか、なんていうか・・・わかりにくい!もっと骨格がはっきりしたものが好きなんだよ!でも、親はこれもお気に入り。全然感想違うね。



◆書評リスト一覧へ戻る 
◆トップページへ戻る