大学生どもはサークルと反戦運動でもしていればええんじゃよ。 「講義もろくにしないイイダ博士は自分の研究に没頭し、1人の人間が意のままに動かせるクローン「ドッペルゲンガル」を開発。その研究内容を詮索しようとした女の子、マチ子が同じくイイダ博士の研究内容を狙う日本刀を持つ男に殺される。人が人を殺し、殺した人は殺されるまで漫画の主人公となり、次から次へと主人公が変わり、ドッペルゲンガルの真相に近づいていく漫画」…とのことだが、最初の主人公が殺されるまでマンガが続かず、結局アイデアをまったく活かしきれずに未完に終ってしまう。もちろん真相は藪の中。 |
↑イイダ博士(左)。彼は哲先生がマンガを描き始める前から存在する大変歴史の古いキャラ。哲先生のサイト、ネクサスをずっと見てきた人には嬉しいキャスティングだ。また、ここでもニセブッダが登場し「せっかく三浪して大学に来たのに…」とグチる(右)。「三浪」という言葉からシネ神との関連性に思い至る。このように過去の香山世界の人気キャラが登場するのだが、ひっかかりのないツルっとした仕上がりに混乱した読者も多かったのでは? |
本アーカイブでは最初の3ページを公開。このドッペルゲンガルにはいくつものバージョンがあり、中には10枚ほど続いているものもある。また、ネーム(??)では、さらに先のページまで出来あがっているようだ。お蔵入りしていた資料がいずれ見つかるかもしれない。 なお、2ページ7コマ目の紙には「KYOUJU NO OTOSHITA KAMI」と書いてある。手塚治虫へのさりげないオマージュは香山哲先生の作品のいたるところで見られるぞ。みんなも探してみよう。 香山哲のピノッキオ ここはイコルリの森だよ!! あれはゼペットじいさんの家だよ。 |
大変珍しいカラー原稿(↑)と、同じくらい珍しい白黒原稿(↓)。「森にはリス」は『ニセブッダ』以来の慣行。これを変えるわけにはいかない! 案内役の蝶は『メリーに首ったけ』のジョナサン・リッチマン並みにおいしいところを持ってった名キャラクター。十数コマのみの登場、場所案内以外は能動的なアクションは一切なし・・・しかし、読者の心に大きな感動を与えた。 |
|
←連合軍に自分の住む町を制圧され、身も心も占領下にあるゲン太。ドラ21にデートを聞かれるも「今日?今日はオーガストの14日だよ」と答える豹変ぶり。ゲン太の日本に対する態度はいつもどこか醒めている。男なのに悔しくないのか! そんなだから戦後も12歳半扱いなんだよ! |
ジャーン。里帰り大砲。「だまってつけろ!! うて!!」 間に合った。里帰り大砲のタマは見事「USA」と書かれた爆弾に命中。「里帰り?」「生まれた所へ帰ってゆくんだ。」 ド〜〜ン。こうして戦争は終った。「そして僕とドラ21は英雄になり、戦争犯罪人とともに調べを受けた後、いっしょに家へ帰った。日本は国連軍の出兵に屈した。」 そして50年が経った。 ゲン太「あれから50年だね・・・」 ドラ21 「あんな状態からよく立ち直ったよな…。もうすっかり平和だ。」 ゲン太「でもドラ21は日本を勝たせる為に来たんだろ?」 ドラ21 「正直、50年たつうちにそんなことバカバカしいと思うようになったよ…。」 「しっぺ返しオルゴール。」「全世界の兵器使用を見はって、使用者に同等の害を加えるひみつどうぐだ。結局、近代には人類を見はる神がいなかったんだよ。さようなら、ゲン太くん…」 突如息を引き取ったドラ21だった。 行きすぎの第2話から一気に方向転換。やっぱり別方向に「行きすぎ」になった第3話。名作マンガの最終回かくあるべし、そう思える感動のフィナーレだ。ま、いつものごとくツッコミどころはたくさんあるんですが・・・。 「正直、50年たつうちにそんなことバカバカしいと思うようになったよ…。」って、あんたどんだけ頭悪いんだよ。最初に気づけよ。B29が来たときのドラ21は「日本の夢が、日本の未来が、全てがかかっているんだ……。」と日本のことしか頭にないし、里帰り大砲だって、自分で打てばいいのに、自分は直接手をくださず、ゲン太に打たせる始末(そのせいでゲン太は戦争犯罪人とともに調べを受けるハメになる)。こいつ、かなり自己中というか、自分のことしか頭にないヤツじゃんかよ。っつーか、戦争犯罪人と一緒に調べを受けるようなヤツがその後何事もなく「一緒に」家に帰れるのか? それも謎。ただ語り手であるゲン太の脳では、この程度の説明が限界だったということなのだろう。 第3話の影の主役はゲン太くんだ。彼の活躍ぶりは見逃せない。アメリカ国旗の絵に、「サイコー」と書かれたTシャツを平然と着ているし(まだ戦争すら終ってないのに一体誰がそんなもん作ったんだ?)、前回しずちゃんたちが死んだのに、悲しい顔ひとつ見せずに、常に無表情。占領前、占領後、戦後、常に同じ表情で、年だけとるゲン太が、作品に見事なスパイスを効かせている。また、「ドラ21は本当に日本を勝たせる気があるの?」という疑問も、ゲン太が読者にかわり、ドラ21に問いただしてくれる。ドラ21の動向に隠れ目立たないが、彼こそこのマンガのキモと言っていい。 |
テンシアマグリ | 第1話に登場。みらいデパート(という名前のデパート)の地下市場で買える。食べると一気に元気が出て体格まで向上してしまうという、とんでもないクリ。口に入れると「バズーンッ」という音がする。でも、21世紀のたかがクリに、そんな効果が期待できるのか? 「ぼくが思うに、何かのサプリメントで、それを臣民たちが怖がらないようにアマグリだといってドラが与えたんじゃないかな」と哲先生は語っている。ぼくはただ空腹が癒されたのと、プラシーボで何か強くなった気がしただけなんだと思います。みんなはどう思う? |
ひめゆりトランポリン | 第2話に登場。みらいデパート6階おもちゃ売り場より。使用効果の前にまずはそのネーミングにド肝を抜かれる。これが21世紀の商品名だとはにわかには信じがたい。おもちゃ売り場で売られていることからも明らかなように本来は子供の遊戯用で、その点から考えてもドラ21に日本を戦争に勝たせる気はおそらくない。ただ、遊戯用のトランポリンで跳ねた人間にぶつかっただけで爆発するほど、当時の連合国軍の戦闘機がもろかったわけではないだろうし、跳ね返した物を爆弾に変える・・・って感じの使用効果が、このトランポリンにはあるのかもしれない。この道具に限らず、はねかえす系、マホカンタ系の道具をドラ21は得意にしているようだ。 |
里帰り大砲 | 第3話に登場。おそらくこれもみらいデパートの商品(みらいデパートで揃わないものはないんでしょう)。里帰り大砲のタマに触れたものは、強制的に故郷に強制送還される。この頃から急に出す道具が神懸ってきた(つまりは21世紀の道具として説明がつかなくなってきた)ドラ21だが、彼はこともあろうにこの大砲を原子爆弾に向けて使用。結果、ピカのヤツは生まれたところに帰っていき、そこで天寿をまっとうすることに…。「大砲」という名前からも、これは紛れもない兵器だが、おそらくは21世紀日本国民の非核三原則への熱い思いが、こんな道具を作らせたのだろう。持たず、作らずはいわずもがな。核は決して持ちこませてもならない。故郷に帰ることができない難民たちも、この道具があればおうちに帰れる。一国に一台、まさに夢の道具。 |
しっぺ返しオルゴール |
第3話に登場。おそらくこれもみらいデパートに・・・って、さすがにこれは売ってないな。「全世界の兵器使用を見はって、使用者に同等の害を加えるひみつどうぐ」とのことだが、どうやったらオルゴールにそんなことが可能なのか、その詳細なメカニズムは不明。キマジメな人はこれを核抑止力の象徴と考えるんだろうが…。フツウの人の感想としては、とにかく「最初に出せよ!」の一言あるのみ。ただドラ21も「ひみつどうぐ」と断っているとおり、この道具だけは別格なのだ。しっぺ返しオルゴールは、自分が食らった分の危害を兵器使用者に加える、つまり自分も兵器による危害を被るのに対し、里帰り大砲を兵器に使用した場合には、そのまま相手に跳ね返し、自分は無傷という違いがある。ドラ21が里帰り大砲のかわりにしっぺ返しオルゴールを使用していたら・・・考えただけでもゾッとする。しかし、残念ながら、核抑止力は大砲というよりはむしろオルゴールなのだ。 |