オロチたいじ 



そのオロチってのは何なんだ?


 ドグマ作品最大の失敗作。↓の絵に登場するようなオッサンが、村の娘を食べるオロチをたいじするため、オロチの住む谷へと向かう・・・みたいなストーリー。説明的な文章が長く続き(「そして、どの首でどの娘を食うた?」など日本語も不自然!)、何がしたいのかわからないまま速攻でプロジェクトが終了した。パソコンでトーンをかけて、キモノの柄を表現しようとか、キャラに今までにないポーズをとらせてみようとか、意欲はかうけど、凝ったことをしようとしたために、面倒な絵が続くハメになってしまった。結果、2枚目以降はトーンすらはいってないし、4枚目からはペンすらいれておらず・・・要するに、こんな扉絵を描いてみたかったのね。

 ただ絵柄は、初期作品の中では『この世の果てのアリス』にもっとも近く、その点は、『アリス』が好きな人には嬉しいかも。もちろん、アリスと違い、登場人物はシシナヅチという名前のジジイと、名すらわからぬ主人公のオッサンだけで、かわいいキャラは一切出てこないが。



↑かっこいい扉絵!? でも、これっきり。やっちゃったとしか言いようのない『オロチたいじ』。パソコンでトーンをいれるという方法は後にアリス下巻でも使われた。とにかく最大の問題点はタイトルに見られる「DRAGON QUEST」の文字。一体何考えてんだか。ドラゴンクエスト、好きなのはわかるし、マネしたいのもわかるけど、フツウはそこでガマンするんだよ。








香山哲の日本昔話シリーズ



 「つるの恩返し」「うらしまたろう」等の有名な昔話を、哲先生がリメイク・リモデル!「等」といったが、存在するのはこの2話のみ。シリーズとして続けていこう、それを一つにコンパイルしていこうという意図は随所に見られ、セリフや擬音を完全に排した、いわゆるサイレントになってたり、ワクを歪んだ太線で囲ってみたり、といった趣向がこらされている。いずれは発表されるかもしれない、哲先生版『ジュン』(※1)、そのパイロット版といったところか。


◆つるの恩返し

 途中まではみなさんご存知の「つるの恩返し」と一緒。違うのはラスト。「つるが織った織物を売ってお金を手に入れる→織物を売ってさらにでかいお金を手に入れる」がテンドン(※2)で繰り返され、機織り役のつるも、織物・お金運搬役のおじいさんもどんどんやつれていき、しまいには白骨化するという内容。おじいさんの純朴で優しい感じがよく伝わってくる絵など、読んでいてほほえましい(おじいさんの寝てるところかわいい)のだが、そこにこのオチだ。

 サイレントに挑戦するも、1作目でフキダシの中に織物やお金の絵を描いてしまっており、試みは早くも失敗した。パンがないならケーキを食べる、文字が使えないなら絵を使えばいいですね。機転を利かせたつもりだとすれば忠告しよう。はっきり言ってそれはルール違反。


◆うらしまたろう

 亀が悪ガキにいじめられているところまでは昔話に同じ。そこに浦島太郎が登場して、大量の石をばら巻く。カンのいい亀は状況をさとり、手足を引っ込める。どれが亀なのかわからず、テンパる悪ガキ3人組。そこに一つだけ模様の違う不自然な石が。それに気づいた3人組がその石を叩くと、なかから白い煙が・・・といった話。

 絵が未熟なせいで表現したいことが表現できていない箇所があるのはなんとももどかしいけど、悪ガキたちの頭の悪そうなところなどはよく伝わってくる。キャラの性格や知能を視覚的に表現する哲先生の腕前はいつも素晴らしい。カメは思いっきりノコノコ。

*****

※1石ノ森章太郎大先生の傑作。フキダシを完全になくすことで、多感な少年の心の動きを豊かに描き出すことに成功した。当時才能のある新人が自分のマンガを古いものにしてしまうことを恐れていた「神様」が、もっとも恐れた新人が石ノ森章太郎大先生。「神様」が『ジュン』を読んで悔しがったエピソードは有名だ。

※2 同じセリフ・動作を繰り返すこと。